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ALIVE【果物籠】

第1章 宴の始まり




目が覚めてから20分


小さなアパートの部屋の窓からは強めの日差しが差し込んできていた


まだ布団に座ったまま覚醒しない頭で
そろそろ動かなきゃ…と考えるがとても起きる気になれない

長い睫毛は下を向いたまま半目でぼーっとしている


彼女は朝が苦手である


蒸し暑い今の季節は特に苦手




「あっつ…」



乾いた口でそう呟くと外から犬が吠える声が聞こえた


いつも、時間通りにアパートの前を散歩するこの声が聞こえたということはそろそろ支度を始めないと本格的にヤバイ


気怠い体を無理矢理起こし
仏壇の写真におはよーと挨拶してから
のろのろとシャワーを浴びに向かった







シャワーで叩き起こした体は
先程の気怠さもう無く動きやすい

テキパキと準備を始める





時計に目をやるともう家を出る時間を5分過ぎていた

大きな瞳を更に見開いてギョッとし、
たっぷり牛乳をそそいでいたシリアルを
一気に掻き込み、鞄を背負う


いつもなら仏壇の前に座って挨拶をするのだが
今日は時間的にそんな余裕はない



「お母さん!いってきまーす!!」



部屋に響く明るい声に返事が返ってくることはなかった。








色素の薄い肩甲骨辺りまで伸びた茶色の髪が、太陽の光を浴びてさらに透き通る


「あー!もう!!邪魔!すっごく邪魔!纏めてくればよかったぁー!!」


そんな綺麗な髪の毛も、通っている女子高に遅刻すまいと全力疾走してる彼女には邪魔でしかない


明日から夏休み

気を抜いていいのは今日ではない
明日からだ

今朝寝起き20分も何もせずにボーッとしていた自分が憎い
もう、とんでもなく憎い



絶対に遅刻できない理由があるのだ



「むちこーく!むけっせーき!
 私の皆勤賞がぁあぁああー!!!」



そう叫び全力疾走すると
すれ違う小学生やお年寄りがビックリして振り返る





知るかそんなもん
皆勤賞大事
何よりも大事






だから気づかなかった





「………ひまり…?」



自分の名を呼んだ草摩由希の存在に。






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