第1章 宴の始まり
大きく息を吸って吐き出すのと同時に、先程ひまりがやっていた降参ポーズをする。
「あー…昨日の今日で落ち着かねーよな。…とりあえず今日はもう休め。寝ろ。」
立ち上がって軽く伸びをすると、悪かった。と小さく呟く夾。
「なんか、こっちこそ気使わせてごめんね!ほんと、大丈夫だから!」
謝られたことに慌てて返すと、夾はどこか悲しそうに笑い「お。」とだけ返事をして部屋を出て行った。
夾が出て行った後のドアを眺めた後、はぁぁぁ。と長いため息を吐きながらうなだれる。
やってしまった。
心配させたくなかったのに………っていうのは程のいい言い訳だ。
"完璧じゃない自分"を見せたくないだけ。
それで幻滅されるのが嫌なだけ。
心配させたくないから。とか綺麗なもんじゃない。
偽っている自分がバレて嫌われるのが怖いっていう自分本意なもの。
大丈夫。これからは…上手くやれる。
閉じ込めて。全部。
この黒いものが溢れ出てこないように……蓋を……。
自分の部屋のベッドで仰向けになっていた由希は、目元を片腕で覆った。
さっきの出来事を思い出す。
「何隠してんのか知らねーけど、疲れねーの?引きつった笑い方。昔っから時々、気持ち悪い笑い方してたよな」
ひまりと話をしようと思ったが、先客がいて。
聞こえてきたのは大嫌いなアイツの声。
アイツは気付いてたんだ…。
昔から分かってたんだ。
顔を思い切り歪ませて、自室に向かいベッドに倒れ込んだ。
腹が立つ。どうしてアイツが分かってるんだ。
俺が一番ひまりを理解していると思ってた。一番近いのは自分だと…。
イライラする。アイツが嫌いだ。
あの顔を思い出しただけで吐き気がする。
苛立つのは誰に?
何に吐き気がする?
「……全部自分だ。」
渇いた笑いがでた。
自惚れて、勘違いしていた自分に苛立つ。恥ずかしい。
それを誰かのせいにして楽になろうといていたことに吐き気がする程の自己嫌悪。
あまりにも子どもだ。
ひまりの"それ"に気付かなかったのは
全て自分の未熟さ故。
「情けない……」
こんなにもガキだったなんて…