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ALIVE【果物籠】

第5章 それぞれの




紅葉が企画した"避暑の旅"に来たひまり、由希、夾、潑春、紅葉は草摩の土地であるが故に誰もいない砂浜に海水浴を楽しみに来ていた。




爽やかな風。

目の前一面に広がる真っ青な海。

小さな波が起こる度にキラキラと眩しいくらいに、太陽の光を照り返す。


そんな海を前にまるで挑戦状でも突きつけたような面持ちで、新しい水着を身につけたひまりが仁王立ちで立っていた。

手にある黒光りしたゴーグルを装着し、纏めた髪を水泳キャップの中に仕舞い込むと一目散に砂浜を駆けていく。




「…ひまり…カッコイイ」

「いや、クソダセェだろ。あれ」


準備体操をしている潑春と腕を組んで立っている夾が、駆けていくひまりの後ろ姿を見ながら話す。
その横から浮き輪を持った紅葉が笑顔で「待ってひまりー」と追いかけて行った。

更にその後ろで砂浜に敷いたビニールシートに座ってことの成り行きを眺めている由希。


「そういえばひまりって泳げるの?所々、運動音痴だったような…」

「足の速さと回避能力だけはズバ抜けてた…。…でも、泳げてそうだよ…」


由希に問われた潑春が「全然進んでないけど…」と付け足して海の方を指差すと、海面でもがいているだけのひまりと、それを浮き輪に揺られながらケラケラ笑って見ている紅葉の姿があった。


「いや、泳げてねぇだろ…ほぼ溺れてんだろ」


夾が呆れた顔で、寄せては返す波のギリギリまで近付くと「ひまり!!」と彼女を呼ぶ。

その声に反応してバシャッと水しぶきを上げて海面に顔を出すと周りをキョロキョロとしてひまりは驚いた。


「全然進んでないんだけど?!」

「お前、あれで進めてると思ってたのかよっ」


くくくっと笑う夾に、ぷかぷかと浮いている紅葉が「ひまりは泳ぐのが苦手なのねー」とふにゃりとした顔で笑った。


「泳ぐの苦手だけど…ちょっとは動くでしょ?!普通?!」

「"普通"はな」

「バタフライ!出来てたでしょ?!」

「……両手がバラバラに動いてたが…?」


ワイワイと楽しそうなひまり達を遠くで見ていた由希が、苦りきった表情をしていた。

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