第33章 眠り姫
ルブリス目線
『………………』
月に照らされる医務室のベッド
その光は妖しく光り、ルブリスを照らしている
『おい、起きろよ』
「…………………」
『無視するな、眠り姫のつもりか?』
「…………………」
『………寝坊助め』
眠っているヴィオラに声をかけるも、彼女は答えない
当然だ、寝ているのだから
だが、これは「眠っている」のとは違うだろう
『ん』
体を実体化させる
簡単なものだ
ただ、魔力をいじって本体からこちらに流せば良いのだから
ヴィオラの額に手を当てて、体を調べる
ズゥゥン
「なんだこりゃ」
素直に驚いてしまう
体内を見ると、中はズタズタになっていた
身体に流れる魔力は弱り、他者の魔力が彼女自身のものを汚染している
何より、ヴィオラに付きまとうのは
「汚いもの」
(一体どこで引っつけてきやがった?)
これはいわゆる呪いだ
何らかの呪詛
別に大したものではないのですぐに取れるのだが、問題は誰にやられたか
「………………あいつか」
一人心当たりがある
そいつはとても執念深く、欲しいものを何としてでも手に入れようとする
一度だけ
本当に、一度だけなら、自分は奴に会ったことがある
「はぁ………お前は見ないうちにめんどくさい事になってたんだなぁ」
彼女のこの不運な体質に呆れてしまう
この、悪いものを引き寄せる運勢に
マリエレンダに生まれたものは全員優秀だが、運がない
それも全て始祖のせいだ
始祖も運がなかったから
自分の知る伝承が、真実ならだが
「何にせよ、このままじゃ死ぬな」
そうだ
彼女はこのまま放置しておいたら死ぬ
魔法使いにとって1番大事なものは魔法力だ
それは、先天的・または後天的に宿る力
純血魔法族は当たり前のように手にするが、マグル達にとっては稀に発するものである
そして、それが体から無くなれば死ぬ
死の呪文『アバダ・ケダブラ』はそういうものである
体に宿る魔法力を一気に吸い取るので、死に至らしめる