第33章 眠り姫
「……………………」
コールが耳元に差し込む銀細工の飾りは、トム・リドルから送られたものだった
銀色の品種が存在しないビオラの花を、装飾品としてトムはプレゼントしたのだ
花の真ん中
蜜の部分には、トムの誕生石である綺麗なタンザナイトがはめ込まれている
暮れゆく夜空を閉じ込めた宝石
それはつまり、ビオラの花と宝石の意味をかけ合わせている
ーーーー 貴方は暮れる夜空の下に咲く花
貴方を夜の空から眺め、貴方に恋焦がれる私を、どうか想ってください ーーーー
美しい片想いの言葉だ
コールは分かっていないだろうが、彼女が自分の元に姿を現し、この話を聞かせてくれた時に、一瞬で分かった
トムは、ずっとヴィオラの事だけを見ていたのだ
でも、花は散ってしまった
ヴィオラは散華した
トムは嘆いた
嘆き、悲しんだ
そして、憎んだ
花を摘んだ者達を
マグルを
「わしはどうすればいい?どうすれば、わしは皆を守りきる事が出来る?」
寝ている姫に、問い掛ける
しかし答えない
花はまるで答えてはくれない
「ヴィオラ
君が自分を愛するようになるまで、わしは君を守り続けよう
ハリーも、ロンもハーマイオニーも
ミネルバもセブルスも、君を愛している
愛しているから、君を憎むのだ
だから
自分を愛しなさい、ヴィオラ」