第29章 悲しい偽り
「セ、ドリック?」
「怪我ないかい?」
心配そうに聞いてくる彼は、しっかりとヴィオラを掴んで落とすまいとしている
驚きすぎて、言葉が出てこない
「セドリックが、助けてくれたの……?」
やっと出てきたのがそれだった
そう聞くと、セドリックは少し微笑む
その笑顔がすごく優しくて
「ありがとう」
ほっとして、心から安心した
その時、笛の音がなった
ピー!!
「ハッフルパフの勝利!!」
フーチが高々と告げる
しかし、勝ったハッフルパフチームの選手達はあまり良い顔はしていない
皆一部始終が見えていたのだ
敵チームとはいえ、気絶してしまったのだから釈然としないだろう
「戻ろう、あんな事になってちゃ、クィディッチはやり直しだ」
「うん、そうだね」
セドリックが言う
それで、両チーム共に地面に戻る
観客席からは、ハッフルパフやスリザリンから強く歓声が聞こえるが、セドリックの表情は、厳しいもののままだった
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場所は医務室
ここでロンやハーマイオニー、グリフィンドールチームの皆が、今か今かとハリーが目覚めるのを待っている
「ん」
ハリーが動く
見ると、うっすら目を開いていた
どうやらもう起きたようだ
「「ハリー!」」
全員で駆け寄る
顔を覗くと、あまり良い顔色ではなかった
「うぅん……」
「大丈夫?」
ハリーは頭を抑えながら起き上がる
「大丈夫だ」と言って、眼鏡をかけた
「気分はどう?」
ハーマイオニーが聞く
ハリーはやがて意識をはっきりとさせ、答えた
「最悪だよ…」
(まあ、当然だよね…)
守護霊呪文が使えれば良かったが、残念ながら出来ない
それにたぶん、あの場面が無くなれば、きっとハリーは守護霊呪文を覚えようとしなかっただろう
ロンが言う
「君……箒から落ちたんだ」
「本当…?
試合は…試合はどうなったの?」
「あなたのせいじゃないわ、ディメンターがグラウンドに入ってきたんだもの…」
「……」
ハリーは黙る
ロンとハーマイオニーが慰めの言葉をかけるも、試合に負けてしまったのだから罪悪感を感じているようだ