第23章 指輪の力
『いや、違う、そもそも俺はゴーストじゃねえよ』
彼は答えてくれた
その返答に?が頭に浮かぶ
「でも、死んでますよね?
現に体が透けてるし…」
『俺は「霊魂」だ
ゴーストとは違ってあの世とこの世を行き来出来る存在』
「? 同じでは?」
『ゴーストは特定の場所に縛られ、全ての人間に見える幽霊だ、俺はそんな哀れな奴らじゃない』
「なるほど…」
分かるようで分からない
一体何が違うのだろう?
まずこの状況はどういう事だろうか
なぜ彼はここにいるのだろう
迷わず聞いた
「あなたがマルフォイ家のゴースト…じゃなくて霊魂じゃないなら、どうしてここにいるんですか?
そしてあなた誰なんですか?」
『質問の多いやつだな、一気に絞れねえのか』
「それが無理だから聞いてるんですっ」
イラついて強めに言ってしまう
まずいとも思ったが、謎を放っておくことは出来ない性分なので構わないでおいた
彼はそれが面白いようで、くくっと笑って言ってくれた
『俺はルブリス
色んな場所を放浪してるただの霊魂だ』
「ルブリス」
これが彼の名前らしい
「ただの霊魂」という言葉に少し違和感があるがもう突っ込まない
色々疑問がありすぎるこの状況では、そんな事をいちいち気にしているとやってられない
頭がパンクしてしまう
『こっちも質問するが、なんでお前俺が見えるんだ?』
頭の中に思考を巡らせていると、ルブリスにそう聞かれる
なんで見えるのかと聞かれても答えられない
自分に霊感があるかないかなんて分からないし、気にしたこともない
それに、彼の口ぶりでは自分にしか見えていないのだろう
なら誰かに聞いたところで分かるはずもない
『! お前なにか持ってるな?』
「え?」
突然そう言われる
「なにか」と言われても見当もつかないのでオウム返ししか出来ない
ルブリスはそれを察したようで
『お前、指見せろ
左手にはめてる指輪があるだろ』
「あ、これ?」
ルブリスが指さしたのはヴィオラの左手薬指
黒いダイヤが光る、綺麗な装飾の指輪だった
(確か付けたまんまにしてたなぁ……)