第23章 指輪の力
手を引かれ、馬車を降りる
パンプスの耳あたりの良い音が静かに鳴る
コツコツコツ
『エスコートされる時は男性に身を委ねる』
ブローから教わった礼儀作法だ
決して手を離さず、ペアと入場する
まあそれは舞踏会などのマナーなのでそこまで堅苦しくする必要は無い
今回はただドラコと接待をするだけ
馬車から降りてしばらく歩くと、たくさんの人通りが見えた
「ねぇドラコ、あれって…」
「あぁ、魔法省大臣だ」
「コーネリウス・ファッジもここに?」
ヴィオラの視線の先にいたのは現魔法省大臣
コーネリウス・ファッジが、ワインを飲んで楽しそうに話している場面
これだけでもルシウスの人脈の広さが伺えるのに、他を見渡せばまたしても有名人がいた
そして、その全員が純血だった
「…………」
分かってはいたが、やはりここは自分には合わない
ここに自分は存在してられない
純血だけじゃなく、マグルも大事だからだ
「大丈夫か?」
「え?」
「ひどい顔色だったから」
「あぁ、大丈夫大丈夫、緊張しちゃって…」
心配したドラコが話しかけてくれる
それで、気分を入れ替えることが出来た
(そうだ、こんな事考えてる場合じゃない)
今はとにかく、必死に抗おう
「おやおや、よく来たねMsマリエレンダ」
「マルフォイさん…」
ドラコに連れられ会場を見回っていると、ルシウス・マルフォイに声をかけられた
後ろには女性もいる
黒とブロンドに分かれた髪に、冷たそうな瞳
彼女は深緑のマーメイドドレスを着ている
首元には一級品のパールが輝き、夜会に出席している女性の中でも格段に美しさを放っていた
「母上」
ドラコが彼女を呼ぶ
彼女の名前はナルシッサ・マルフォイ
ルシウスの妻であり、ドラコの母親である女性だ
呼ばれたナルシッサは、微笑みをこちらに向ける
冷たい瞳がすぐに笑顔に変わった
そして、言う
「いらっしゃいヴィオラ、久しぶりにお会いできて嬉しいわ」
「お招き頂き感謝します、マルフォイ夫人」
「ふふ、成長してまた美しくなったわね
よくお似合いよ、そのワンピース」
「ありがとうございます」