第22章 ナイトメア
「ヴィオラ、特殊能力って分かる?」
突然、母はこんな風に言い始めた
とりあえず答える
「? アニメーガスとかの事?」
「そう、先祖からの遺伝や何らかの原因によって手に入れる力の事
言うなれば、ヴィオラの『愛の魔法』もそうね」
確かにエルラの言う通り
これは特殊能力だ
魔法省に登録されていない未知の力
だが、それがエドワードとなんの関係があるのか
「エドワードは…というか私は、その部類の人間よ
先祖からの遺伝じゃなく、何らかの原因のせいで、私も能力者になったの」
「……」
「私にあって、エドワードに遺伝したもの
それは、「ナイトメア」
「未来視」と呼ばれる力よ」
「未来視?」
エルラはそう言った
「ナイトメア」とは、悪夢を意味する言葉だ
または、妖魔のメス馬の怪物の名前
夜な夜な枕元に現れ、己のトラウマやもっとも恐れるものを夢として見せる
タチの悪い悪夢を見せる
だが「未来視」とはどういう事なのか
一般的には「未来を視る」という力だ
「予知視」と同じようなものだが、そこについては詳しくない
疑問に思っていると、話してくれる
「これは昔の話なのだけど……幼い頃、「ナイトメア」の怪物に取り憑かれたことがあるの
毎日夜にメス馬が現れて、悪夢を見せてくる
すごく恐ろしかった…
幸い、私のお父さん…ヴィオラのおじいちゃんね
父が助けてくれたのだけど、「ナイトメア」に解放される代わりに未来を見る力を得た
どんな未来でも覗くことができる
それが何十年後でも、何百年後でも」
エルラは至って落ち着いて話しているが、内容は信じられないものだった
まあ特殊能力はそういうものだ
「七変化」や「アニメーガス」は普通ではできない事をやってのける
「七変化」は自分の好きなように見た目を変えられるし、「アニメーガス」は、高度な練習が必要だが習得すればいつでも動物になれるのだ
だから、エルラの持つその力も、それらと何も変わらない
しかし1つ疑問がある
「じゃあ、なんでエドワードは悪夢を見るの?
ナイトメアに取り憑かれてる訳じゃないんでしょ?」
「エドワードの見た夢は、そもそも悪夢じゃないの」