第21章 秘密の部屋
「…」
チラッとジニーを見る
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないの」
(ジニーの王子様に手を出すのは気が引けるなぁ……)
どうしてこうも罪悪感が溢れてくるのだろう
まあやらなければいけないのでその気持ちに蓋をする
そして、腕に顔を近づけた
《ハリーに癒しを、苦しみを和らげる魔法を》
チュッ
優しく
傷口にそっと、キスをした
「!?ヴィオラ、何して…」
当然、ハリーは慌てふためく
ジニーも隣で目を見開いて息を飲んでいる
(あぁ、心が痛い……)
二人が慌てる内に、魔法は現れた
ヒラヒラ
蝶が舞う
綺麗なピンク色の蝶
その蝶の大群は辺りを舞い、ハリーの傷を治す
願いに応えるように
優しく
綺麗に
光が空に踊る
そして、溶けていった
「どう?痛くない?」
「「…………」」
「えっと…」
「「…………」」
聞いてみたが、返答はかえってこない
二人とも、信じられないといった顔で固まってしまっている
腕を凝視してしまっている
「あ、あ…」
「痛くないよ…大丈夫…」
ジニーとハリーはたどたどしている
まあ無理もない
あんな魔法は存在しないから
「マリエレンダ」しか知らない、秘密の力
「マリエレンダ」しか知らない、不思議な力
彼らは何も知らないのだ
ハリーが呟く
「全く痛くない…」
「それは良かった、ごめんねいきなり」
「大丈夫、ちょっとびっくりしたけど」
「あはは…」
いつもみたいな他愛もない話をする
しかしジニーだけが未だポカンとしていて
「ジニー?大丈夫?」
ハリーに言われるも、彼女は声を出さず頷くだけ
仕方ないので彼女にだけ説明した
「安心して、傷を治しただけだから
ああするしかなくて」
「…すごいわ」
「それに、ジニーの王子様なんだもんね」
「〜っ!」
最後の部分だけハリーに見えないように口を隠し、小声で言った
案の定、ジニーは赤面している
(ふふ、片想い中のジニーは可愛いなぁ……若いっていいわ…)
おばあさんのような言動は放っておいて…。
「ジニー、歩ける?」
「ええ、大丈夫」
「それじゃあ、ロンの所に戻ろう」
「そうだね」