第21章 秘密の部屋
ひどい叫び声が辺りに響いていたが、消えた今となっては静寂が残るだけ
その時
「っは!」
ジニーが目を覚ました
「ジニー、大丈夫?」
「ヴィオラ…」
彼女の瞳は揺れている
困惑しているのだ
「ジニー…」
ハリーが彼女の名前を呼ぶ
それにジニーは、彼を見て涙を浮かべた
「ハリー、私がやったの
でも信じて、そんなつもりじゃ…リドルがやらせたの、それで…
っ!ハリー、怪我してるわ…」
「心配ないよ」
さっきと同じように、ハリーは笑った
でも、牙を抜いたので痛みが増したようだ、少し表情が歪んでいる
しかし、一転して冷静にハリーは言った
「ジニー、君は早くここから出るんだ
通路を進んでロンを探すんだ、ヴィオラも」
「ハリー、それはっ」
「いいんだ、君達だけでも」
こんな時でさえ人の事を気遣ってしまう
ハリーは本当に心優しいのだろう
どうにかして彼の傷を治せないだろうか
(愛の魔法なら出来るかも……)
覚悟を決めた
傷を治す程度ならなんてことは無い
少し気だるくなってしまうだけ
「ハリー、腕を貸して」
「ヴィオラ?」
「いいから」
大人しく、怪我をした右腕を見せてくれる
やはり傷が酷い
おそらく貫通している
すぐにでも消毒しないと悪化してしまいそうだ
「クゥゥ」
「「!」」
綺麗な鳴き声
フォークスだ
「フォークス?どうしたの?」
フォークスは頬を擦り寄せて来る
撫でて欲しいのだろうか
「クゥ」
しばらくしてフォークスはハリーの元に寄る
そして
ポタリ
ポタリ
涙を流した
「っ」
「大丈夫?痛い?」
「いや、平気さ」
フォークスが傷口に涙を垂らす
しかし傷は治らない
「なんだか、少しだけ楽になったかも…」
ハリーが呟く
確かに顔色は良くなったが、それだけだ
(なんで?原作ではフォークスが治してくれるのに……)
フォークスの涙には癒しの力がある
どんな傷でも治せるのだ
映画ではハリーの傷も治してくれるのに、何故か今は治っていなかった
「クゥゥ」
くちばしでツンツンとつついてくる
まるで何かをおねだりするかのよう
(ダンブルドアが私にしろとでも言ってるのかなぁ……)
とりあえず、傷が治る気配がない
ならば自分でやってしまおう