第21章 秘密の部屋
そう言うも彼の腕はすごく痛そうだ
安心させようと無理に笑っているが、とても心苦しくなる
早くその痛みを無くしてあげたくて
ハリーにまたいつものように笑って欲しくて
決して無理した微笑みではない、可愛らしい笑顔で言って欲しかった
「……………」
今自分の顔は酷く歪んでいるだろう
こんな時に笑う事なんて出来ない
それが作り笑いでも、出来なかった
ジニーの元に行く
「さっきよりも冷たくなってる……」
頬に触れると氷みたいに冷えていた
肌も青白く変わり、死のうとしているのが分かる
「はぁ…はぁ」
ハリーの呼吸が荒くなっていく
毒が回っているのだ
トムがこちらにゆったりと歩いて、言った
「大したものだろう?バジリスクの毒が身体を貫くその速さ
君の命も、あと数分も持つまい
どうだ?たかが日記にやられる気分は
それも、愚かな小娘の手にかかって」
彼の目はハリーを捉えている
見下げて、彼が死ぬのを冷たい目で見届けようとしている
拳を握りしめる
「っ…」
(日記を壊せば、ジニーは助かる……)
何はどうあれ、目の前で人が死ぬ
そう考えると酷く気分が沈むが、やるしかない
「ハリー」
「?」
ジニーのそばにある日記を手に取る
それをハリーに見せて、言う
「彼は、このトム・リドルは、ただの日記と同じ存在だよ」
そう、言った
「!」
「日記と同じ存在」
ハリーも、ハーマイオニーとまではいかないが賢いので、今の言葉で分かった
彼が日記に閉じ込められた記憶なら、元となるものさえ壊してしまえば消滅するのだ
ハリーはゆったりと牙を持つ
怪我をしていない方の手で毒牙を握りしめ、日記を開く
「何をする?」
トムが言う
ハリーはトムを一瞬見ただけ
構わず牙を刺そうとする
もちろん、トムは慌てだした
「やめろ!よせ!」
グサッ
「っ」
トムがうめいている
日記を破壊され、体が消えていき、それに叫んでいるのだ
直視なんて出来なかった
その姿が怖いと思ったから
顔を背けた
「……臆病者」
ぽつりと呟く
「あぁぁぁぁぁ!!」
トムは消えた