第19章 蜘蛛の王
『わしらはその生き物の話をしない
わしら蜘蛛の仲間が何よりも恐れる太古の生き物だ」
「太古の生き物……なるほど、蛇か!」
クィレルが叫んだ
本当に彼は賢いとつくづく思う
ダンブルドアさえ辿り着いてるか分からない答えをいとも簡単に割り出してしまうのだから
話を続ける
『殺された子はトイレで発見された
疑われたわしを、ハグリッドが森に放してくれたのだ』
「ハリー」
「なに!」
「うぅ〜」
ロンが怯えながら上を指す
見ると、上からは小さな蜘蛛達が何匹も糸を伝って降りてこようとしており、恐怖しか覚えない光景だった
「ハ、ハリー、もう」
「帰ろう」と促したので、ハリーもコクコクと頷いてくれた
ハリーはアラゴグに向き直り、焦りながら話す
「あ、あの…ありがとう…じゃあ、もう帰ります」
『帰る?それはなるまい
わしの命令で我が子達はハグリッドを傷付けはしない
だがノコノコと真っ只中にやって来た新鮮な肉をお預けにはできまい』
アラゴグが至って冷静な声で恐ろしい事を告げる
自分達を喰らうつもりだ
「っ!」
杖を構える
いつでも応戦出来るように
すると突然、蜘蛛達が一斉に鳴き出した
「!?」
「何?なんなんだよぉ!」
ロンが慌ててやけくそのように叫ぶ
だが、蜘蛛達は鳴き止まない
アラゴグの雰囲気が変わった
重苦しかったのに、怒りが湧いているように鋭くなってきているのを感じる
『忌々しい生き写しめ、その姿が跡形も残らんよう骨まで喰らい尽くしてやる』
「っ」
(何の話をしているの?)
ドクン
「あ」
あぁ、またこれだ
『ハグリッド?』
『いやぁ、何でもねぇ、気にすんな』
『絶対何か隠したでしょ?』
『いや!何も隠してねぇ!』
『ヴェーディミリアス(隠れるもの、現れよ)』
『あぁ!』
『わあ!蜘蛛!?』
『た、頼む、秘密にしててくれ!』
『うわぁ〜、可愛い〜!』
『え?』
『ねぇ!この子なんて言うの?』
『アラゴグだ……』
『可愛い〜!』
『……』
『大丈夫だよハグリッド、絶対内緒にするから』
『…ありがとうな』
『ふふ』