第19章 蜘蛛の王
取り出したのは手鏡
アンティーク調の可愛らしい手鏡を二つ取り出し、一つをロンに渡した
「はい、これで周りに気を付けて進んでね?」
「なんで手鏡なんか…」
「こう、死角になってる所とか鏡で見るんだよ、そしたら気付かれないかもしれないし」
「ふぅん」
「それと、もし何か怪しいものを見つけても、絶対に直に目で見ないで」
「分かった、そのために手鏡だね」
「そうそう」
取ってつけた理由を並べる
用途はただバジリスクの目を見ないためだが、鏡が必要なのは間違ってはいない
「それじゃ、探そうか」
ロンが言う
分かれて、別々でハーマイオニーを探すことにした
「ハーマイオニー」
彼女の名前を呼ぶ
図書室なので大声は出せない
そのまま小声で呼び続ける
彼女が居そうな場所を探す
(どこにいるんだろう…早く見つけないと石になっちゃう)
急いで探す
鏡で死角を確認しながら進む
ズルズル
「!」
音が聞こえた
何かが進む音
這いずり回るような、奇妙な音
(何?まさかバジリスクが……)
「わぁぁ!」
「!!」
今のは
「ロン!?」
慌てて図書室を走り、叫び声のした方へと走る
「ロン!大丈夫?!」
「ヴィオラ!ハーマイオニーが!」
「っ!」
ロンが指さした方には、確かにハーマイオニーがいた
鏡を持って倒れたハーマイオニーが、いた
「ハーマイオニー、そんな…」
石になってしまった彼女が、そこにはいた
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「ハーマイオニー…」
ハリーが駆け付け、力なく呟く
マクゴナガルが呼んだのだろう
「図書室で倒れていたのを彼らが見つけたのです、そばにこれが……」
マクゴナガルがそう言ってハリーに見せたのは、彼女の手鏡
「どういう事なのか分かりますか?」
「…いいえ」
(もっと早く行けば……)
後悔の念が溢れ出す
もっと早く行けば
もっと注意深くしておけば、ハーマイオニーは石にならずにすんだ
「…………………………」
手を握りしめる
(絶対襲撃を止めるからね)
そう、強く誓った