第4章 受け継がれる愛の魔法
勢いよく飛びつき、ヴィオラはハンネスに抱きついた
「もう、遅いよー」
「ははは、すまないな、ヴィー、準備は出来てるか?」
「バッチリ!」
「それじゃぁ行くぞ!」
そうして出発しようとした時
「お嬢様ー!!」
「あ、ブロー!」
ブローと呼ばれたその子は、帽子を持って走ってきた
「もう、帽子を忘れていらっしゃいますよ!」
「ほんとだ、ありがとう!」
帽子を被りながらお礼を言うと、ブローは長い耳をピクピクと動かした
これは嬉しい時に出てしまう彼の癖だ
ブローはマリエレンダ家の屋敷しもべだ
祖父のハンネスが子供の頃からこの家に仕えているんだとか
彼は正真正銘の「出来る執事」である
「くれぐれも気を付けてください、知らない人について行かないように、迷子になったら…」
「もう!ブロー、パパと同じこと言ってるよ」
「おや、そうだったのですか?」
「それだけ皆がヴィオラの事を大好きということなんだよよ」
「おじいちゃんの言う通りよ?一応パパも心配して言ってるんだから
まあ大半は自分の天使に悪い虫がつかないように危惧して言ってるんだけどね…」
「エルラ、可愛い我が子に変な奴が付きまといだしたらどうするんだい!?ただでさえヴィオラは5歳でこんなに可愛いんだ!成長したらもっと美人になるに決まってるよ!」
と、ダニーが騒ぎ出した
確かにダニーの言う通りだとヴィオラは思った
ヴィオラの容姿は5歳の女の子にしてはあまりにも人形のように可愛らしく、特徴であるピンクブラウンの髪は肩まで伸びていた
(瞳の色は前世のまんまなんだよね)
今も変わらず目は茶色のまんまだ
先程のダニーの心配している悪い虫が付きまとうということはないだろう
麗乃の時は恋なんてしたことが無かった
両親が亡くなり孤児院にいた時は周りに友達なんていなかった
中学になってからは多少友達はできたが「恋の訪れ」は自分にはやってこなかった
だから彼女には恋がどういうものか分からない
それにハリーポッターのキャラクターは皆結婚相手が最後に決まっているのでそれを邪魔しようとも思わなかった
「ほら、ヴィー、親バカなパパはほっといて動物園に行こう」
「うん!行く行く!!」
ハンネスに急かされ思い出す
二つ返事をして車に乗り込んだ