第12章 賢者の石
彼の返答に、ヴォルデモートが嘲笑った
「愚かな奴め、お前の両親もそうだったな、死ぬ間際までみっともなく子供のために命乞いをしていた
ああ、同じだなハリー、全く同じ
親子揃って同じようにわしに殺されるのだ!はははは!」
「黙って!!」
「…何?」
ヴォルデモートに意見した
闇の帝王にそんな事を言うなんてとても怖いが、ハリーの両親であるリリーとジェームズを馬鹿にしないで欲しいのだ
リリーは最後までハリーを守った
我が子のために命を捨てて、幸せを願いながら亡くなったのだ
その彼女の想いを、馬鹿にするのは許さない
「黙ってって言ったの」
「……」
「子供を想う母親の気持ちなんてあなたには分からないでしょうけど、少なくともみっともなくなんかない!愛されて生まれたのに、そんな風に穢さないで!
ハリーはあなたには殺させない!
ヴォルデモートなんかには、指一本触れさせないんだから!!」
大声で言い放った
途端に、眩い光が部屋を包み込む
「ヴィオラ!?」
「ぐぁっ、なんだこれは!?」
ミシミシと部屋が鳴り出す
この光は、ヴィオラから発せられている
煌々と輝く、ピンク色の光が全員を包み込み、照らしていく
いつかの蝶が現れる
何匹も何匹も大群で現れ、ヴィオラの周りを舞う
煌めき、幾重にもりん粉を散らす
神様の声がした
『やめてヴィオラ!それ以上はッ!』
「ごめんなさい神様、それは出来ません」
神様の制止の声を振りほどき、彼女は力を使った
これは、私がハリーを想って生まれた力だから
今ここで、使わなきゃいけない
『クィレル先生から離れて!!』
ブワッ!!
「ぐぁあ!!」
ピンク色の蝶の大群がクィレルへと襲いかかる
蝶の大群はクィレルを吹き飛ばし、溢れるりん粉を残してそのまま飛んでいってしまった
やがて光もゆっくりと消えていき、静寂が戻る
「はぁっ…はぁっ…」
静かな空間の中、彼女の荒い息遣いだけが聞こえてくる
クィレルは部屋の奥で倒れており、気を失っている
「ヴィ、オラ……」
ハリーが戸惑いながら彼女の名前を呼ぶ
ドサリ
「っ…」
(ダメだ……力が入らない……)