第12章 賢者の石
見るからに怪しい人だ
それが誰かはもう予想がついている
(クィレル先生……)
近くまでやってくると、ハリーが柱に隠れてヴィオラに小声で言った
「ヴィオラはここで待ってて」
「え?っでも…」
「お願い、ここで静かに待ってて欲しいんだ」
「………分かった、危ないと思ったら前に出るからね?」
「うん」
ハリーに釘を差して大人しく柱に隠れて待つ
いよいよだ
ハリーが話し始めた
(クィレル先生がハリーにやられる時に出ていかなきゃっ)
しばらく、ハリーとクィレルの話し合いが続く
まだ大丈夫だと判断し、ヴィオラは出ていかなかった
そして、あの人の声がした
「わしが直に話す」
「っあなたは、まだ弱ってらっしゃいます」
「その位の力ならある」
ヴォルデモートの掠れるような声がする
クィレルは彼の言うことを聞き、後ろを向いてターバンをとった
ターバンの中から現れたヴォルデモートは、まるでハリーとの再会が嬉しいかのように笑った
「……ハリー・ポッター、また会ったな」
「ヴォルデモート………」
「そうだ、見ろ、この姿
こうして人の体を借りねば生きられぬ、寄生虫のような様を」
ヴォルデモートの姿はおぞましく、この世に存在する生き物なのかどうかが疑わしくなってくる
なぜ、そんな姿になってまで生きたいのか
そうまでして何を成し遂げたいのか
やはり自分には理解出来ない
「わしとお前なら全て思いのままにできる、さあ、石をよこせ!」
「やるもんか!」
「殺せ!」
ヴォルデモートがそう言い放つ
たちまち、クィレルがハリーへと襲いかかろうとする
しかしそこでいてもたってもいられず、ヴィオラは前に出てきた
「クィレル先生!」
「っ!君は…」
「ダメだヴィオラ!」
「ヴィオラ?」
一人、ヴォルデモートが彼女の名前を呟く
だが気にせずクィレルに話しかける
「もうやめてくださいクィレル先生!賢者の石は、あなたには手に入れられないんです」
「何を言っている……そこにあるではないか!欲しいものは、ポッターのポケットの中にあるのだ!」
「お前達には絶対渡さない!」
ハリーが間髪入れずにそう答える