第12章 賢者の石
ハリーの問いにロンが答える
チェスの試合をするために、彼は三人に指示を出す
ハリーはビショップの位置、ハーマイオニーはクイーン側のルーク、そしてヴィオラはロンのいるナイトの後ろ側のポーンだ
準備のできたロンが言う
「まず先手は向こうの白の駒、次が、僕達だ」
「…ロン、まさか本物の魔法使いのチェスをここでやるんじゃないわよね?」
心配になったハーマイオニーがそう聞いた
彼女の疑問は分かる
これだけ巨大なチェスの駒に、立派な盤上まで用意されていたらそう思うだろう
「D-5に動け!」
ロンがそう言うと、駒が動き出す
彼は不安そうな顔をして言った
「そうだよ、ハーマイオニー
このゲームはまるっきり、魔法使いのチェスと同じだ」
それからしばらく、何手も続いた
普段からやっているだけあって、ロンの指示は的確だ
とても頼りになる姿がそこにはあった
ハーマイオニーが大人になって惚れるのも無理はない
そして、最後の局面
ロンが自分を犠牲にしてハリーを『賢者の石』の元へ行かせようとしている
でも、それをハリーとハーマイオニーが許さない
三人が言い争うのをヴィオラはただ見ていた
自分はここで何かを発言する事は出来ない
ハリー達の気持ちも分かる
でもロンが犠牲にならなければ次に進めないからだ
「っ………………」
あまりにも自分の無力を痛感して、血が出そうになるほど唇を噛み締めた
「…騎士をH-3へ……」
ロンが駒に命令する
駒は動き、ロンを乗せて進む
「っロン…」
彼の表情は怯えている
それでも、彼は進むのだ
そして、来てしまった
「チェック」
静寂の中、ロンの声が響き渡る
途端に、相手の駒が動き、ロンの騎士を粉々に破壊した
「あぁぁぁ!!」
バタン!
「ロン!」
「っ…」
「ダメ!ハーマイオニー!」
ハーマイオニーが飛び出そうとするも、止めた
ゲームは続いている
ヴィオラもロンに寄って無事を確かめたいが、続行している今、下手に動くのは危険だ
「…チェックメイト」
ハリーがそう言った
目の前の騎士の剣がするりと落ち、ガシャンと音を立てる
終わった
ロンのおかげで、このゲームに勝った
「ロン!」
彼の名前を呼び急いで走る