第12章 賢者の石
クィレル目線
「賢者の石……賢者の石を探さなければ」
廊下をコツコツと早歩きで進む
何度もその言葉を繰り返す
『賢者の石』
それを探すのは自分の使命だ
不老不死となる命の水
それを飲めばヴォルデモートは完全体となる
偉大なあの方を復活させることは、自分が果たすべき使命だ
《探せ、私のために》
「分かっています」
《何としてでも石を見つけ出し、私に献上するのだ》
「ええ、全てはあなたのために」
自分の頭に宿る闇の帝王と話をする
一年前、旅をしている時に自分は不完全体のヴォルデモートと出会った
彼に心酔していた自分は、彼を喜んで頭に宿らせ隠してきたのだ
ターバンを巻いて、匂いで気付かれないようにニンニク臭くして、何とか今日まで隠し通してきた
でもそれも今日まで
ヴォルデモートが完全に復活すれば、彼は頭から離れ実体を取り戻す
自分はその時、腹心として仕えるのだ
コツコツコツ
廊下をひたすらに歩く
三階の、近付いてはいけないとされている部屋まで行き、扉を開ける
そしてその部屋にあるドアを開いた
「ゥワン!ガウッ、ワンワン!!」
三頭犬が吠えて威嚇してきた
たちまち杖を振り、横にあるハープに魔法をかける
ハープは優しい音色を奏で始め、三頭犬はみるみる内に眠りについてしまった
コツコツ
三頭犬の下に潜り込み、隠し扉を開ける
中に悪魔の罠があるのが見えたが、弱点となる呪文を唱え無効化した
中に入って着地する
そしてまた進む
《もうすぐだ!賢者の石は近い!もうすぐで、私は完全になる!》
頭の中でヴォルデモートが喜ぶ声が聞こえる
それに自分も喜んだ
が、すぐに彼女の顔が頭に浮かんだ
『クィレル先生は立派な教師です、誰がなんと言おうと、もっと自信を持てばいいんですよ』
優しく、純粋に笑うヴィオラ・マリエレンダの顔
自分はずっと虐げられて周りの人間全てが憎かったはずなのに、彼女といると、ただの教師になっていた
ヴォルデモートの腹心などということは忘れて、普通に授業を教える「クィレル先生」になっていたのだ