第12章 賢者の石
そして、心の内をありのままに言う
「クィレル先生は立派なホグワーツ教師です、誰がなんと言おうと、もっと自信を持てばいいんですよ
スネイプ先生みたいにとは言いませんが、時に厳しく接すれば、他の生徒もきっと見直しますよ」
笑顔でそう言った
励ますように言った
するとクィレルの顔に自信の笑みが浮かんでくる
生徒に褒められた事、応援された事が嬉しいかのように彼は笑った
でも、そこまでだった
「ッ!」
「クィレル先生?」
突然、彼の顔が険しくなる
何かに焦るように顔色が変わった
俯き、頭を抱えてしまっている
「クィレル先生?大丈夫ですか?」
何があったのか心配してそう言う
しばらくしてクィレルはこちらを向いた
ビクッ!
思わず驚いて肩をビクつかせてしまう
それほどクィレルの表情は、先程とは別人のように冷たかったからだ
「少し急用を思い出したので失礼するよ」
まるで機械のように感情のこもっていない声でそう言うと、クィレルは医務室の扉を開けて早歩きで出ていってしまった
パタン
「なんだったの……?」
扉を見つめてそう呟く
嬉しそうに微笑んでいたクィレル
突然人が変わったかのように冷めたクィレル
そして
『賢者の石を探せ』
そうわずかながらも呟いていたクィレル
気のせいなんかじゃない
はっきりと聞こえたのだ
この耳に、しっかりと届いた
「ああ、今日か……」
そこで気付いた
今日なのだ
『賢者の石』をハリー達が守りに行くのは
クィレルが奪おうとするのは
今日が、その運命の日なのだ
「行かなきゃ…………クィレル先生を助けなきゃ……」
うわ言のように静かに呟いた
だって、さっきの会話で分かってしまったから
クィレルが、まだ迷っているということに
自信がなくて、周りを憎んで、ヴォルデモートを崇拝して
それでもまだ迷っていた
『賢者の石』を奪い、ヴォルデモートを復活させることに、迷い、悩んでいたのだ
なら救わなければ
呼び戻さなければ
闇に堕ちてしまわないように声をかけなければ
ヴィオラは一人、夜を待った