第12章 賢者の石
「?クィレル先生、どうかしました?」
「マリエレンダ、君は私のことをなんとも思わないのか?」
「え?」
突然、そんな事を聞かれた
(え?え?)
質問の意図が分からない
なぜ急にそんなことを聞くのか
戸惑っていると、クィレルが話し出した
「君はいつも、私に教師として接してくれている
他の生徒は、私がどもっていることを馬鹿にしているのに、君だけは無垢な笑顔で話してくれる
一体なぜそんなことができる?」
「………………」
思わず黙ってしまう
そうだった
彼は学生時代から周りに馬鹿にされていたのだ
踏みにじられて見下されていた
だから、反抗心から闇の道を辿った
誰も自分を認めてくれないから
誰も、自分を対等に扱ってくれることは無かったから
いじめられて
馬鹿にされて
闇に染まって
それでも結局、これから利用されて死んでしまう
そう思うと、なんだか哀れに思えてくる
このままでは彼の人生は踏みつけられて終わってしまうのだ
「…………私は、クィレル先生のこと好きですよ?」
ぽつりと、そう言った
なんとなく出てきたのがそれだった
「すっ!?」
「ち、違います!教師として好きって意味です!尊敬の意味です!!」
案の定、クィレルは顔を真っ赤にしている
慌てて弁護する
完全にやらかした
(あー、なんでこんなことしか言えないんだろう……)
今の失言で悩んではいられない
ごっほんと言って仕切り直す
「えっと…クィレル先生の授業はとても分かりやすいですし、学んでてすごく楽しいんです
それに、どもってるのも別に悪い事じゃないでしょう?ちょっと恥ずかしがり屋さんみたいなだけで」
「………………」
「私は教師としてクィレル先生を尊敬してます
ちゃんと分かりやすいように教えて下さってますし、質問したら答えてくれるじゃないですか
どもってることを馬鹿にしてくる生徒がいたら、そいつの内申点を悪く付けてやればいいんですよ」
ふふふと悪戯に笑って言う
クィレルもそれにつられたのか少しばかり微笑んだ
実際自分ならそうする
何がなんでもそうする
「眼には眼を歯には歯を」だ