第11章 プレゼントは死の秘宝
(神様?)
ヴィオラはその声の主をしっかりと理解する
神様は何かに焦っているように話し続ける
『今すぐ逃げて!そこから離れるんだ!』
「え?え?」
その切羽詰まった声からは焦りと怯えが伝わってくる
何が何だか分からずそこに立ち尽くしていると
ペタリ
ペタリ
「!」
「ッホー!!」
(今のっ)
しっかりと耳に届いた
床を歩く音
靴などではなく、何か柔らかく平べったい粘着質のものが這い蹲る気味の悪い音
神様が呟く
『っ……奴らが来た……』
「や、奴らって……どういうことなんですか?!」
『いいから早く逃げて、急がないと君が殺される』
「誰に!」
『人間よりもタチの悪い、この世で最も暗い生き物』
「え?」
ペタ
何かはすぐ近くで止まった
一部屋先にいるような気配がする
「…………」
あまりの恐怖に、立ち尽くしてしまう
何も言葉を発さず、無言で動かず
ただその部屋を見続ける
ペタリ
ペタリ
近付いてきた
足音が段々大きくなる
「はっはっ」
息が荒くなる
心拍数が上がる
(な、に?何なの……)
光を灯した杖を音のする部屋に近付ける
すると
「っ!」
中から出てきたのは
恐ろしい怪物だった
「あ……や、だ……」
彼女はそれが何かを知っている
自分はそれが何かを知っている
それは、生者の成れの果て
死してなお生きたいと願った、哀れな欲深い生者の成れの果て
それは、もう、肉体などない
命あるものを喰らい尽くす亡者だった
『早く逃げろ!!』
「っ」
ダッ!
神様の声により我を取り戻りし、急いで走る
走って走って、走り続けて外へと向かう
震える足を無理矢理押さえつけて、箒を置いた玄関場所へと走る
「はあっはあっ」
(逃げなきゃっ……走らなきゃっ)
慌てて走りながらも、思い出す
昔、本で読んだ知識
あれは亡者と言われる哀れな死者たち
世界で最も暗い生き物
捕まれば同じ奈落の底へと連れて行かれる、恐ろしい者たち
「なんでっ……なんでこんな所に!」
走りながらやり場のない怒りをぶつけた
今の自分に亡者達を退けることは出来ない
その力はまだない