第23章 そうだ、温泉に行こう
「浴衣……そんなに珍しいものか? 確かに、令和では和装はとんと見なくなった」
「あう……。そうですね、あんまり着なくなってしまいました。でも、和装の無惨様も見てみたいなぁ~……って。ダメですか?」
もじもじしてる自分、我ながら気持ち悪い。きっと『下らん』って吐き捨てられるんだろうな……と思っていた矢先、無惨様は少しの沈黙を挟んでこう言った。
「…………まあ、良いんじゃないか」
「へ……?」
「温泉だろう? お前の異能ならどこへでも飛べるし、行ってやってもいいと言ったんだ」
「ほ、ほんとですか!? やったー!」
飛び上がって小躍りする私を、無惨様は呆れたような目で見ていた。念願の温泉デートが、温泉デートが叶ってしまう……!
「あ~、早く明日にならないかなぁ」
「明日は、嫌でも来るだろう。それより、そんな唐突に決めてしまって宿は取れるのか?」
「え? ……あ、そっか!」
「……そんな当たり前のことを失念するほど浮かれているとはな」
「うぅ……」
洗濯機を回し終えると、ポケットからスマホを取り出した。前日ということで埋まっている宿が多かったが、幸いいくつかは空きがあるようだった。