第1章 無惨様、令和に降臨す
時は、令和元年――
無惨が眠りから覚めて繭から這い出ると、無限城は消え去って辺りは森になっていた。
(毒は無事に分解できたようだが……鳴女は死んだのか? 鬼狩り共も上弦たちの姿も見当たらないが……)
一歩ずつ、夜の森を慎重に歩き始める。周囲を見渡すと、繭を取り囲むように藤の花が咲き乱れているようだった。
藤の花は鬼にとって毒のはずだが、なぜかそこまで苦しくならない。無惨はそのことを疑問に思いながらも森を進んでいった。
(少し眠りすぎたか? 禰豆子を手に入れられなかったのは非常に惜しいが……またやり直せばいい。私には、無限に時間があるのだ)
この時の彼は、そう思っていたのだが。
森を抜け、歩き続けて、街まで出て――
目眩を覚えた。
ぎらぎらと明るい、ネオンサイン。見上げればあちらこちらに、吸い込まれそうな摩天楼。夜なのに溢れ返る人々。恐ろしいほどの車の数――
「ここは、一体……? 私はどれだけ眠っていたのだ……?」
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