第4章 サンタになった黒猫/リヴァイ(2020,BDss)
兵団にいる時から変わらないリリアの笑顔を見ながら、あぁ……。とバスケットを受け取る。鼻先を赤くして、手袋をしているがきっと小さな手は冷たくなっているはず。
馬車を使えばいいが、この天気で馬車も運行停止になっていたのかもしれない。
それでもリリアは足元が悪い中リヴァイに会いに来た。
旦那がいるリリアを早く帰さなければ。
祝いの言葉を言いに来てくれただけで充分。
礼を言い、近くまで送り届ければいい。
早く、早く。
「今年も兵長におめでとうって言えて良かった。また、来年も……その後も……おめでとうって言いに来てもいいですか?兵長、この日だけでも会いに来てもいいです……か?」
「……俺じゃ、駄目か?」
問うた質問とは違う答えでリリアはきょとんとする。
「俺は……兵士長だ。ここから離れられない。身勝手な事を言っているのは理解している。お前を幸せになれと送ったのに、幸せになれない道に連れ戻そうとしている。母親の薬の件も、お前も全て俺に託せ」
「リヴァイ……兵長……」
「兵士に戻らなくていい。俺の帰りを待って、お前だけでも笑顔で迎えて欲しい。片目失っても指がなくなっても絶対帰ると約束する」
「兵長、私……」
「最後まで聞いてくれ、頼む」
リリアは傘を落としそうになり、傘の柄を持つ手をリヴァイは重なるように支える。
2人の距離は近くなった。
「サンタもお前の存在を感じ取ってここまで来たんだろうな。俺もこいつもお前がいないと駄目なんだ。俺は……リリアを愛している」
「へ、兵長……」
「・・・すまん。困るのは分かっている。聞いてもらえただけでもマシだな。ほら、送るから帰るぞ」
リリアから手を離すと今度はリリアがリヴァイの腕を掴む。
目を潤ませ、赤くなっているのは寒さのせいだけではない。