• テキストサイズ

―夢の籠―(進撃短編集)

第4章 サンタになった黒猫/リヴァイ(2020,BDss)


「おい、サンタ。口の周りミルクまみれじゃねぇか……汚ねぇな。パンも浸せば柔らかくなるだろ」

食堂の勝手口からリヴァイはいつものように小さな器にミルクを入れ、時にはパンを浮かばせた。
猫の前でしゃがみこみ、猫と戯れている様子は一部で癒し効果があると言われているほど、リヴァイはリリアの心配をよそに甲斐甲斐しく世話をしている。
冬が本格化してきて雪が降る日は、ふわふわとした毛布の用意もする。
その毛布を今夜は早めに用意してやる。しっかり洗濯し、リヴァイ好みの清潔な毛布。
もうすぐ兵舎の食堂の夕食が始まる。

今日は25日。

リヴァイの誕生日。



「リヴァイ!誕生日おめでとう!」
「リヴァイ兵長おめでとうございます!」

調査兵団の兵士長の誕生日祝いとあって、食事は肉や甘い物が並ぶ。リヴァイは自分の誕生日ではあるが、歳を重ねる事よりも兵士たちに贅沢させてやれる日ということの方が有意義だと思う。

「お前ら、慌てて食うな……床が汚れるぞ」

葡萄酒を片手に窓の外を見やる。
今頃リリアは新しい家族と温かいぬくもりの中、楽しそうな表情でクリスマスを祝っているのだろう。リヴァイが理想とするリリアの姿。
ただその隣りが自分ではない現実に胸がチクリとする。
クリスマスであり誕生日。
本当は祝って貰いたい。
うまい紅茶が飲めたらいい。それぐらいしか欲がなかったはずが今ではリリアに祝っていもらい、抱きしめたいと思う。

シンシンと綿のような雪が降り、既に積もっている雪の上に重なる。
そんな真っ白な一面にぽつんと真っ黒な斑点。

「おいおいおい・・・あいつ何してんだ?!」

ダンっと叩き付けるように葡萄酒を置く。
大きな物音に部下たちは心配の声をかける。しかしリヴァイはそれに答えることもなく、皆は食堂から走って行くリヴァイの後ろ姿をただ見ていた。

「サンタ!!てめぇの体じゃこの雪は危ねぇだろ!!」

よく見れば小さな足跡がポツポツ。
途中ではまってしまったのか胴体ほどの穴。
黒い体には粉雪がかかり薄らと白くなっている。
リヴァイはチッと舌打ちをすると傘もささずにサンタの元へ駆け寄る。サンタもまた一声鳴くと走り出す。

「くそっ!冗談じゃねぇぞ……こんな寒い中迷子になったら死ぬ。リリアもいねぇってのに、アイツまでいなくなったら……」

/ 60ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp