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―夢の籠―(進撃短編集)

第4章 サンタになった黒猫/リヴァイ(2020,BDss)


猫の存在を認知してからは時折兵舎の外や調理場の裏口、訓練所の近くで見掛けるようになった。
若しかすると今までも気づかなかっただけで近くに居たのかもしれない。
1度存在を気にしてしまうと、その視界に自然と入ってくる。
それは猫だけではないようだった。

「リヴァイ、リリアばかり見てどうしたの?」
「は?見てねぇ。俺の班じゃねぇからな。ハンジのメガネが曇ってるからだろ」

あ、ほんとだ。とハンジは雑にメガネを兵服の裾で拭く。
が、実際メガネは曇っていない。
任務用に特別仕様にしている。
ハンジなりの冗談。
妙に浮ついた声でお先に!とハンジは軽やかに木から降りて行く。

リヴァイは眉間に皺を寄せた顔をする。自分の眉間を触り、いつもこんな感じか・・・と装う。
やたらとあの1人と1匹が目につくようになってからは、眉間が緩みやすくなりヒーリング効果かと思う。
口に弧を描く笑顔とまではいかなくとも視線が優しくなる。

目の前でリリアは討伐補佐訓練をしている。
リリアはリヴァイよりも小柄で、兵士なのに動きが少し目に余る。言い方を変えれば鈍臭いのだ。本来なら兵士として厳しく鍛えるべきであり、心を鬼にするところ。
それでもその鈍臭さを─可愛いと思ってしまう。
可愛げで生きていける世界なら微笑ましいが、その真逆の地獄。
閉じ込めるように抱きしめ歯が浮くような言葉を囁かれ、絵に描いたような幸せな家庭の方がリリアには似合う。

「あいつは兵士に向いてねぇな」


ただ走ってくるだけなのに、小動物を思わせる愛くるしさ。
リヴァイはいよいよ自分が分からなくなってきた。
あの猫のように擦り寄ってくるものならどうするだろう。頭を撫で、名前を呼び愛くるしいと言葉にするのだろうか。

「リヴァイ兵長!少し、お話よろしいでしょうか!」

しかし走ってきたリリアは小動物ではない。
擦り寄るどころか、二、三歩離れている。
もどかしい距離にリヴァイはさり気なく二歩程近づいた。

「どうした、俺からのアドバイスか?」
「それも是非お聞きしたい所ですが...あの、実は私……」

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