第4章 サンタになった黒猫/リヴァイ(2020,BDss)
「急に後ろから悪かったな。任務明けで今日は調整日のはずだが?」
「そういう兵長もお早いですね?もしかして訓練ですか?」
そう言って首にかかった白いタオルを指差す。
訓練と言っても調整日は立体機動が使えない為ジョギングである。
それも終わったところでオフのリリアと出会った。いつも束ねている髪も解かれ自由に風に遊ばれている。リリアから香るのは花か髪の香りなのか、リヴァイの胸は妙にざわついた。
「あっ!!!」
「……は?何だ?」
足元にざわざわと気配を感じる。
柔らかく温かい感触に視線を下ろすと、真っ黒い小さい生き物。ニャァと目を細めながら一声鳴くと今度は足取り軽くリリアの足元へ行き、リヴァイにしたのと同じように擦り寄る。
「サンタ。リヴァイ兵長の服汚しちゃ駄目よ?」
「……サンタ?その猫の名前か?」
「はい!去年のクリスマスに拾ったのでサンタです!あ……えっと、兵舎で飼ってるわけじゃなくて……その……」
見られてはいけないモノを隠すように黒猫のサンタを包み抱く。軟体動物みたいにクネクネと体を動かすとリリアの腕と腕の間から顔を出し、リリアの戸惑いなどお構いなく人懐っこい表情で鳴いていた。
兵団が動物を飼うことを禁じているという事はないが、生と死の狭間の立場でありその中で生き物を飼うという者は今まで誰一人としておらず。
捨てられていて見捨てられずにこっそりと世話をしていたというのは、巷ではよくある話。
子供に割と怯えられるリヴァイにもあの懐きよう。足回りについた毛はいい気はしなかったが、リリアに撫でられている猫の表情は愛嬌があるものだから文句も言えない。
「兵舎の中で飼っていないなら構わねぇ。あちこち擦り付けられて毛が抜けまくるのはごめんだからな」
「あ、ありがとうございます!良かったね!サンタ!!」
猫はじっとリヴァイを見つめる。人間の言葉を理解しているとは思えないが、その目はお礼でも述べているのだろうかと思う。
お礼ならリリアに言えよ?と顎で示す。
タイミングよくニャァとか細く鳴く猫に、偶然のものではあるが可笑しくてクスりと笑うとリリアは目を猫のように丸くする。たまにリヴァイが笑うと驚く兵士や仲間がいるが、リリアもその類だろう。
「兵長って、微笑むとサンタみたいですね!」
「なんだそりゃ」