第4章 サンタになった黒猫/リヴァイ(2020,BDss)
【サンタになった黒猫】
冬晴れが清々しい師走のある日。
一点の曇りもない空を見上げながら、はぁと息を吐く。気温が上がる前の朝が白い息によって視界を曇らせる。
昨晩の冷え込みで砂利は湿っていて、歩けば乾いた音より少し粘着質な音。
靴底の隙間に所狭しと砂利が埋まり汚していく。
汚ねぇ。そう思いながら靴の清掃の予定を詰まった時間のどこに組み込もうと思案していた。
そんな湿り気の中でも春のような雰囲気が目に止まる。
「君たちは強いね。こんな寒い中、一生懸命生きてるんだもの」
花壇に白、黄、紫の花びらを付けた小さな花。
寒さや霜にも負けず真っ直ぐに生きている。そういう品種の花であり、そういう風に生きるように決められた人生元い花生。
しゃがみこんで花に声をかける小さな背中に目を向ける。
男も脱帽する腕を持つ女兵士がここには多数所属する。腕相撲するものなら男のプライドは小枝のように折られるというもの。
それこそそういう人間は、そういう風に生きるように決められた運命なのかもしれない。
目の前の彼女はどうだろう。
「リヴァイ兵長?」
名前を呼ばれハッとした。
小さく屈んでいたリリアは、後ろにいるリヴァイの存在に気づき驚きながらも敬礼に胸を叩く。
そんなリリアを見て心臓を捧げろとは言わないが生きろ。と、いつも思う。