第1章 アッカーマン・アニマルホスピタル/リヴァイ
『リリアちゃん!』
『アンカさん!!ピクシスお爺さんの療法食とお薬ですね』
お昼前、アンカが猫用ゲージで高齢猫のピクシスを連れて来院してきた。
リリアはリヴァイを呼んで、診察室へ案内した。
アンカは猫カフェのオーナーを営んでいて、そこの猫たちの診察や検診はアッカーマン・ホスピタルにお願いしている。
ピクシスは以前肝臓を悪くしていて、リヴァイの診察によると遺伝的なものということ。
『爺さん、ちゃんと食べてるか?』
診察台に乗せると、少し痩せているが顔つきはしっかりしている。
『食欲はまあまあありますよ。ほんと、若い女の子が好きみたいで若いお客さんが来ると寝てても起きて近寄るんです』
『そうか。爺さん肝臓悪くても元気だし、女好きだなんて前世でもそんな爺さんだったのかもな』
診察台にいたピクシスはリリアを見つけると、ニャーと嬉しそうに鳴き、ぴょんとリリアに抱っこしてもらうと胸の辺りをスリスリと擦り寄せる。
『あ、こら!駄目ですよ、リリアちゃんにそんな事したらリヴァイ先生に解剖されます!』
『まさかぁ!ふふっ、ピクシスお爺さん、長生きしてね』
ニャーとピクシスはずっとスリスリしていた。
『・・・・・・爺さん、くたばったら俺がじっくり弔ってやるよ』
リヴァイは声のトーンを下げて、眉間のシワを増やしながら周りに聞こえない程の声で呟いた。
『リヴァイ先生、何かおっしゃいました?』
『・・・・・・何もねぇ。爺さんの療法食と薬をカルテに記したからリリア用意してこい。爺さんお大事にな』
カルテをリリアの頭にポンと乗せて渡すとリヴァイは診察室から出ていった。
『リリアちゃん、リヴァイ先生と進展あった?』
『ア、アンカさん!!しーーっ!』
『もう先生いないからいいじゃない~』
いつまでも胸をスリスリしているピクシスをアンカが剥がすと、ずいっとゲージに戻す。お爺さんなのに扱い雑だなぁとリリアは苦笑いをする。
アンカはリリアの恋心を知っている1人。
『そ、そんな進展だなんて・・・私は看護士でリヴァイ先生は私の上司で獣医さんだし・・・』
『恋にはそんな事関係ないって!のんびりしてたらリヴァイ先生取られちゃうよ?先生、モテるでしょ?』