第2章 I will always love you/エルヴィン
『エルヴィン入ろっ!』
アクセサリーに負けない笑顔で振り返られ、光が当てられたかのように目を細める。
誰かが言ってたな。
世界は残酷なんだからって。
『・・・・・・好きなんだな』
『ん?うん、アクセサリーは好きだけど?』
軽く握った拳を口元に当てて笑う俺にリリアは、何がおかしいのー?と笑いながら服を引っ張る。
クライアントなんだけどな。
昨日会ったばかりなんだけどな。
この歳になって久しぶりに淡い気持ちになる。
リヴァイに言うとビックリするかもな。
『ねぇ、あんた・・・タレントのリリアよね?』
マスクとサングラスをかけた、”いかにも”な女が声を掛けてきたと同時に俺はリリアの前に立つ。
背中から覗こうとするリリアの顔が見えないように、片手でリリアの腰に手回し体をくっ付けた。
『エルヴィン・・・』
『シッ!』
『ねぇ、そこの後ろにいる女って仕事なら何でもするのよ?キスでもベッドシーンでも!!』
『・・・・・・っ』
『・・・仕事での芝居だろう?』
『な゛!!あんたも彼氏なんかで可哀想ね!!ちゃんと仕事を選ぶように彼氏なら躾でもしたら?!』
『生憎、俺の女は仕事熱心なんだよ。スタッフからの信頼も熱い。頑張る自分の女を応援するのが彼氏の役目だ』
思わず、『俺』が出てしまい後ろに隠れているリリアが、女・・・俺の女・・・と呟きながら背中に擦り寄る。
あぁ・・・こんな時なのに少し舞い上がってしまうのは、ボディガードとして失格だな。
『意味わかんない!すっっごく腹立つ!!エレン君に近づいた女は、私たち推しの敵!!』
『そうか。なら、俺はリリアを傷つけようとする全てが俺の敵だ』
『ふふっ・・・あはは・・・いつまで強気な彼氏でいられるのかしら?』
女はトートバッグから包丁を取り出した。