第2章 I will always love you/エルヴィン
夕方。
リリアが一人暮らしをしているという、高級マンションの前に車を停める。
当たり前だが、防犯面も申し分なく芸能人らしいマンションだ。ここの不動産も会社関係のようで、何人か同じ事務所のタレントがいるらしい。
リリアの仕事ぶりなら当たり前か。
『にしても、リリアがこの辺りに住んでるなんてな』
『まぁ、お仕事頑張ってるからさ!エルヴィンも頑張らないとねー!なんちゃって!』
『あぁ。まぁ、私の家は向かいのマンションだ。私も頑張っているんだよ?』
リリアはえ?え?と自分のマンションと俺のマンションを交互に見る。俺が住んでいるマンションもリリアが住んでいるところと変わらないぐらいの大きさである。芸能人相手にボディガードをしているのだから、当たり前ではあるのだがリリアを驚きを隠せないようだった。
『わぁーびっくり!そりゃ、そっか!あんな高級車ならこれぐらいのマンションに住んでてもおかしくないよね!あ・・・、それなのにさっきは水滴をシートに落としてごめんね』
『ただの水だ。それぐらい気にしなくてよろしい』
氷だけになったドリンクの水滴が車のシートに落ちただけである。シミにもならない程度だ。
『ありがとう!じゃぁ、明日からまた宜しくね!あんな脅迫なんて何もないと思うけどさ』
捨てといてあげる!と俺の分の紙コップと自分の分のカップを重ねる。
リリアは気が利くし、素直に謝れる良い子だ。
きっとそれは俺にとってだけではなく、さり気ない気遣いが周りにも出来る子なんだろう。
本当のリリアのことを知っている身近なスタッフはきっとハンジ以外にもいる。
だから、リリアは周りのサポートもあって売れてきた。イメージは少々作られてしまったが。
『半日ほどだが、リリアはそのままの自然体が1番だよ。きっとその方がもっと世間に受け入れられると思う。俺が君の所の社長ならそうさせてる。ハンジもきっとそう思ってるはずだ。この件が解決するまで、傍で君を守ることを約束しよう』
決して抱きしめてはいけない。
だけど少し触れたくて、髪を撫でた。