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―夢の籠―(進撃短編集)

第2章 I will always love you/エルヴィン


バックミラーから先程出てきた駐車場の出入り口を確認すると、慌てだした取材班は・・・1台目、つまりハンジの方を追いかけている。


『エルヴィン・・・すごいね。頭がキレるー!』


リリアは後部座席から身を乗り出し、走行中にも関わらずよいしょ!と跨いで助手席へ移動する。
一応靴を脱いでいた辺りが、常識はあるんだなと思わせる。走行中ってのを省いてな・・・。

いい車ねー!と言いながら革張りの椅子をあちこち摩って遊んでいる。彼女ぐらい稼いでいると、こういった類の車は乗り慣れていそうなものだが。


『取材班を撒いてきたとはいえ、少しは大人しくするんだ。ほら、シートベルトもしなさい』


信号で停まった瞬間にパーキングに切り替え、助手席の方へ手を伸ばす。
ベルトの金具を掴み、軽く引き伸ばしカチャリと装着するとなにやらリリアは顔を赤くしている。

酸いも甘いも経験してきた大人の自分は成程と少し照れが移ってしまった。


『エルヴィンは大人だから余裕なんだろうけど、レディにはちゃんと距離を保ってよねー』
『ははは。おじさんが近づいたからって嫌がられなくて良かったよ』
『えー、エルヴィンはおじさんじゃないよー!私ぐらいの年齢だとエルヴィンぐらいの大人の男性に憧れるってもんだよ』


『へぇ・・・。それなら、大人の恋愛に憧れていると捉えていいわけだな?』


信号が青になり、目を進行方向に向けたままギアをドライブに戻しアクセルを踏む。
そして、アームレストに乗せているリリアの手の上に自分の手を重ねた。

『あ・・・えっと・・・これは?』

しどろもどろに頭が動いているのが雰囲気で分かり面白い。若い女性をからかって、しかもクライアントにこんなことをしている自分も大概である。

重ねた手の下は小さくて、緊張からか少し汗ばんでいる。売れてきているタレントでもこういう事は疎いのかもしれない。

つい、悪い大人の部分が出てしまい重ねている手の親指を動かしてリリアの小指の付け根をするっと撫でる。


『ちょ・・・!やり過ぎ!!』

『リリア、顔が赤いよ。大人相手に大人の恋愛に憧れてるって言うからね。大人ならこれぐらいは普通だよ』


リリアは嘘だぁ!と口を尖らせる。

嘘ではないが、大人の恋愛は個人の考えにもよるな・・・と頭を撫でる。



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