第2章 I will always love you/エルヴィン
『やぁ!!エルヴィン待ってたよ!!君にしては随分と遅かったんだね!』
『あぁ・・・すまない。予想より道が混んでいたんだ』
目的のビルにたどり着き、予め話を通していてようで、すんなりとガードマンの質問をすり抜けられた。
駐車場に車を停め、ようやくだな・・・と独り言を言っていると、奥からチンとエレベーターからハンジが降りながらひらひらと手を振っていた。
『それは報道陣が殺到していたからだろうね』
『私がここに来る前にも機材を抱えていた取材班がいたよ。随分と大きなニュースになったものだ・・・。それで・・・例の彼女は?』
『事務所の空いている部屋に待機してもらっているよ。マネージャーの私も追いかけられるから、外をウロウロ出来なくて困ってるだよねー』
参った参った!と背中をバシバシと叩かれ、強めの力に軽く咳払いをする。
ハンジに案内され、エレベーターに乗り込み地下から一気に上の階へ上がる。
最近内装を替えたばかりという事務所は白を基調としており、企業としてもうなぎ登りで例の彼女を筆頭に数々の有名人を輩出していた。
『有名人になるのも楽じゃないな・・・』
通路を歩きながらガラス窓の下に群がる報道陣を見て、ため息を吐きかけた。
*****
『私だよ!開けるね!』
ハンジが数回ノックをすると、奥から可愛らしい声で返事が返ってきた。
今をときめく芸能人ってやつか。。
『初めまして。今回、貴女のボディガードをすることになりました、エルヴィン・スミスと申します』
『あー・・・貴方がボディガードする人?私はリリア、宜しくね』
足を組んでスマホを弄りながら軽く会釈をするリリア。
第一印象は・・・芸能人の裏の顔のまんまってやつである。
リリアは化粧品や整髪料などのCMの出演や雑誌のモデルをしている。爽やかで清潔感のある笑顔のCMとは程遠い愛想だ。この愛想の無さを見ていると、同僚の男を思い出す。
とはいえ、クライアントであり一回り以上の年の差があり、大人の余裕で引きつりそうな口角を並行に上げる。
『リリアさんは整髪料のCMに出ていましたね。私はあのメーカーのメンズものを気に入ってよく使っているんですよ』
『へー。メンズものはよく分かんないんだけど・・・まぁ、機会があればスポンサーからメンズ物貰ってきてあげるよ』