第2章 I will always love you/エルヴィン
『今日は信号によく引っかかる・・・。時間に間に合うか・・・?』
3分の1程だけ開いた車の窓に肘を置き頭を支える。
多忙に多忙が重なりクライアントとの約束の時間が迫り、僅かに焦りが生じる。
都心の大通りではあるが、今日は特に道が混んでいた。
目の前の横断歩道には忙しなく人が右往左往している。
平日の昼過ぎ、会社員の昼休憩が終わりを知らせてくれるような、これからの仕事が億劫そうな、そんな表情をしていた。
『ようやく、青か』
アクセルを軽く踏み込み、助走をつけて走らせると今度は信号から随分離れたところで躓く。
いくら何でも混み過ぎだろう・・・と思い、目線の先に移った左に抜け道がありそうな小道を見つける。
軽自動車なら通りやすそうな幅だが、自分の車の幅だと・・・かなりギリギリ。
亀と競走すると負けてしまうような混み状態より、そこを曲がり一か八か抜け道があると信じて左折してみようか。賭け事は嫌いではない。
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『ふぅ、よかった。あの道は正解だったな・・・』
抜けた道は地域住民しか通らなさそうな住宅街。
よそ者の車が気になるのか歩道を歩く住民の視線が痛い。
そして、目に付いたのがどう見ても地域住民ではない大きな機材を運んでいる若い男たち。
あぁ・・・始まってしまっていたか。
これから向かうクライアントにとって迷惑な者たち。
『もうすぐ到着だな。あぁ・・・あのビルか』
大きな機材を運んでいる男たちをチラリと一瞥すると、あっという間に追い抜いた。