第1章 アッカーマン・アニマルホスピタル/リヴァイ
第2診察室から受付のほうを覗くと、リヴァイが分厚い本を片手にナイルと2人で本を見て何か喋っていた。その様子を見て、リリアは自分ももう少し薬学知識があれば会話が分かるのに・・・とヤケになりそうになる。
『リヴァイ先生がこんな診察時間中に事務作業って珍しい・・・。いつも診察時間が終わってからされてるのに』
人間の性というべきか、人は見てはいけないものが見たくなときがある。リリアはそっと半開きのパソコンを起こす。
─────メール?
リリアは画面をスクロールさせた。
『こ、これって・・・マーレ・アニマル医療センターのジーク先生への手紙?』
マーレ・アニマル医療センターとはリヴァイが実習勤務をしていた病院であり、ジークはそこで日本人でありながら獣医師長をしている。
人としては気が合わないが、獣医としては認めているとリヴァイが言っていたのを思い出した。
『あ、日本語・・・』
リヴァイのことだから外国語で書いてあるのか思いきや、外国語があまり得意ではないリリアは日本語で書いてありホッとする。
『リヴァイ先生、私の未熟さじゃ無理と思って許可を止めるように言ってるのかな・・・』
更にスクロールをする。
瞳だけ動かして文を追っていく。
挨拶からはじまり、マーレ・アニマル医療センターの様子、リヴァイの近況・・・そしてリリアのこと。
自分の名前を見つけるとスクロールする手が止まる。
『・・・・・・見るの止めよう』
リリアはパソコンを元の状態に戻す。
決断してきている気持ちの判断材料にしたくなくなかった。
『リリア、何している・・・』
『あ・・・いえ!ナイルさんと話が終わったのですね!お見送りしたら納品したもの片付けます!』
腕を組みもたれるようにリヴァイは立っている。
リリアは会釈してすれ違おうとすると、腕を強く握られる。
『おい、ほんとに・・・行く気・・・なのか?』
『リヴァイ・・・先生?』
リヴァイの強い目にリリアが映る。
どっちの意味の強い目なのかリリアは分からない。