第1章
佐助が米の花を焦がしている間に、安土では看過できない問題が燻っていた。
「目障りな猿が増えたな、政宗」
「さる?」
「…信長さま………ッ!」
「うるさい。貴様の事ではない」
己のことかと背筋が凍る思いをした秀吉を放っておいて、秀吉をチラリと見やった政宗に視線を移す。
感情は読めない。
「山の猿どもが我が領土を這いずり回っておるのは知っている。領民に化けて降りてきていることもな」
「………………」
「政宗。貴様その猿に餌を与えているな」
「何のことだか」
「惚(とぼ)けるか」
「獣と戯れる趣味はないもんで」
「ふっ、獣か。よかろう、ならば」