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四月十日之空

第1章    



トンッ

「…っ!!」


頭に何かが降ってきた。
それは器用に髪を伝って、佐助の右肩に鎮座する。


「クナイ…!無事だったのか」

「情けねぇなぁ佐助!」


壁の向こうから伊稚(いち)の声がする。


「どうして…!?」

「お前の栗鼠(リス)が呼びに来た」

「雨乃?雨乃もいるのか」

「はぁ?」


キィーンッ!!


「よそ見すんな」

「助かったハゲ!」

「禿げじゃねぇ!全剃りだ!!」


雨乃と佐助に目掛けて投げられた手裏剣を白鹿(しろく)が刀で弾き返し、二人に背を向けて立ちはだかる。

変わんねぇよハゲ、と軽く吐きつけた雨乃は、佐助の目を見てギョッとした。

血でも吹き出しているのかと言うくらい、眼球が紅く染まっていたのだ。


(厄介だな)


「佐助」


キュポン、と栓を抜く音は佐助にも聞こえ、見えない誰かの気配に警戒を強める。


「……雨乃、なのか?」

「口に入ったら黙って飲み込め。オレを信じろ」


チュプン、と小さい水音のあと、柔らかいものが唇に触れ、苦い液体が流し込まれる。


「…っ!」

「吐くな、飲み込め。飲み込んだら目を休めろ」


それだけ言うと、雨乃の気配が佐助のそばから消えた。
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