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四月十日之空

第1章    



パチン、パチンと渇いた音がしたかと思えば、次から次へ小さな音が爆ぜる。鉄鍋の中は米の花が二分咲きといったところ。

香ばしく仄かに甘みを含んだ香りが風に散っていく。

一際大きく爆ぜた花が眼鏡に向かって行くのを避けようと、首を右へ傾けた瞬間。


「あちち」


耳たぶを指先で素早くブンブン振り回し、熱さを紛らわせる。

蓋(ふた)をした方がいいな、と今更ながら思い立って木蓋を探している間もパンパンと米が爆ぜて飛び出していく。


「あった。……待って待って」


カタン。
木蓋ごしに花を咲かせる息吹きが伝わってくる。

米の花がこれ以上減らないことに安心して、ふっと視線を上げると、春の風が草花の頭を優しく撫でているところだった。


「…春だなぁ」


そろそろ本格的に土筆(つくし)が出る頃だろうか。
タラの芽は天ぷらでいただきたい。箸休めの小鉢はお浸しにした菜の花。筍ご飯も食べたい。
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