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四月十日之空

第1章    



この辺りは佐助の庭と言っても過言ではないくらい、どこに何があるのか把握していた。

走る佐助の背後から投げられた手裏剣が、ドスドスドスッと木の幹にいくつも突き刺さる。


「…!!」


突然目の前に大きな壁が立ち塞がった。
気が付くと四方が壁に囲まれていて、どこにも出口が見当たらない。


「どうして……!」


ツルンとした壁面はどこまでも平らで井戸のように深く、天空の光も僅かに届く程度で登れる余地もない。

土だったはずの足元も、壁と同じく岩になっていた。


(何がどうなってるんだ…!)


何かの幻術かと、眼を閉じて口の端を噛み切って見ても、壁はそこにあった。


「……っ」


肩の傷が痛む。
怪我をしていなくても登るのに難儀しそうな壁を、今の佐助が登りきれるはずがなかった。


「頭(かしら)」

「討て」


遮蔽物は何もなく、男たちの前できょろきょろと辺りを見回す佐助に、刀を向けてそろりと近付く。
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