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四月十日之空

第1章    



音もなく間合いを詰めたかと思えば、光る刀身が突然目の前に現れる。

往(い)なして反撃をと一歩踏み出すころには佐助の間合いの外にいて、厄介なことこの上ない。

防戦一方の戦況は、やがて押され気味になり、鋒(きっさき)が装束を掠める回数が増えてくる。


「襤褸(ぼろ)を纏(まと)う春日の猿よ。まだ足掻くか」

「……っ、死にたくないので」


男はふん、と鼻で嗤った。
気がつけば6人に囲まれている。


(鎖(くさり)が二人、短刀が三人………、誰が来る…どこから)


「足りぬな。何もかも」

「……ッ!」


左後ろから上腕を斬りつけられて、鋭い痛みがドッと吹き出す。まだ指が動かせるところをみると、神経や腱までは切れていない様に思えた。

傷口が熱い。
袖が水で濡れているように貼り付いてくる。


「…っ」


反撃をと振り返っても、刃が届いたそこに誰もいない。

ただ見えたのは回っていたはずの分銅が、急に大きくなって迫ってきている景色だった。
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