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四月十日之空

第1章    



相撲の立ち会いのように物音1つで火蓋を切って落とすなんて、作られた世界の虚像だと思っていた。


ガキーーーーンッッ


「…っ!」


勝敗を決めるのに審判や立会人がいない場面なんて、現実世界では出会わないし、そもそも敵同士。

息が合う、なんてまずないと思ってた。


ギリギリギリギリ…ッ


それなのに。


ザザッ
ヒュンッ、ヒュンッ


受けた刀を弾き返し、返す刀でニ,三歩踏み込んでみるも、柳のしなやかさで同じだけ下がられてしまい不発に終わる。

闇雲に相手の間合いへ押し入ると、簡単に返り討ちにされる。


「………っ」


この場面でまきびしは無い。
手裏剣もクナイも、無計画に投げられるほど潤沢にあるわけでもない。


(別の拠点まで行ければ…)


背後からヒュンヒュンと、空を切る音がする。


「逃がさぬよ」


前方の刀。後方の鎖。


(参ったな。巻くのも容易じゃないってことか)
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