第1章
「…………」
てんでバラバラな方向から床板が軋む。
僅かに差し込む光が足裏に遮られ、佐助の顔がところどころ影になる。
(俺を探してるのか……?)
床下から横穴を掘っていてよかった、と体勢を変えた瞬間、目の前に鋒(きっさき)が降ってきて息が詰まる。
「どうした」
「……“ 鼠 ”じゃ」
ダンッッッ!!!
背後で踏み抜かれた床板が撓(たわ)み、弾かれるように頭上の板まで吹き飛んだ。煙は見えない。
「く……ッ!」
ヒュンッ
スパッ……ガッ
斬りかかってくる直前。
梁(はり)目掛けてクナイを飛ばし、口布を鼻上までずり上げて、懐に忍ばせてあった目眩ましを叩き付ける。
ボワッとした白煙が上がり、相手が怯んだ隙に横穴の奥へと駆け込んだ。
「この程度の目眩ましなど」
「離れろ!!!」
目眩ましの白い靄(もや)がパチパチと爆ぜはじめ、天井から降ってきた粉と反応して小爆発が起こった。
ボンッと小屋自体が揺れ、隙間から煙が立ち上る。
その揺れは、横穴を抜ける佐助も感じ、上手くいったことを知った。