第1章 春は出会いの季節です。
「!!」
やった、人が来た。
その事実で頭が一杯になると、安心感で涙が出そうになる。
登ってきた彼が私の声が届くくらいの位置まで来たのを見届けてから、
「助けてください」
そう言葉を発しようと思っていた。
けれど、近くまで来た彼は私が声をかける前に私の目の前で自転車を止めてくれた。
とても良い調子で登っていたのに申し訳ないけど、今はそんなことを言っている場合でもない。
「どうしたの?何かあった?」
「あの、お願いします助けてください!!今すぐ水分あげないと小野田くんが…」
「えぇー?行き倒れ?!」
私の説明を聞いた彼は最初は少し驚いた様子だったけど、すぐに状況を理解してくれたようでもう一度ペダルに足を乗せた。
「それはすぐ駆けつけなきゃいけなそうだね。ちょっと行ってくるよ。君はここで休んでて。行き倒れてる人なんてそうそういないだろうし、俺一人でも分かるから。」
「え、でも私も…」
「顔色悪いから。ね?」