第1章 春は出会いの季節です。
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小野田くんが自転車競技部に入部してから一週間。
小野田くんも今泉くんも鳴子くんも、ペダルを力いっぱい回して毎日頑張っている。
自分が回した分だけ進む自転車は、努力の成果がハッキリと推進力になって現れる。
3人はもう後ろ姿すら見えないところまで進んでしまった感があるのに、私の自転車はまるで重りでもつけているかのように一向に進まない。
ただ単調に日々をこなしているというだけで、あの日から特に何も事態は進展していなかった。
なかなか答えの出ない、「これからどうするべきか」を考えて、思わずため息が出る。
「はー………」
「ため息つくと幸せ逃げてまうでー?ちゃん!」
「わあ!!!」
一年生のクラスが並ぶ廊下の窓から外を眺めていた時だった。
明るい声が突然、隣で響く。
驚いてその方向を向くと、視界には鮮やかな赤。
「鳴子くん!」
「よ!あの日ぶりやな。部活のことどうなっとるか思て気になって聞きに来たで。」
「あはは…見ての通り何も進んでない感じ。で、どうしようかなーってまた考えてたとこ。」
「さよか。なあ、今日の放課後時間あるか?」
「え、うん。」
「ならワイらの練習、見に来たらどうや?ゴチャゴチャ頭ん中で考えとるより何か進展するかもしらんで!」