第1章 春は出会いの季節です。
心地良い風が頬を撫でていった。
春は好きな季節だ。
私は昔から春になるととても気持ちが上向きになる。
柔らかい日差し、優しい風。
新しいことがたくさん待つこの季節は、なんだか胸がドキドキする。
色々なことを頑張りたくなるし、挑戦してみたくなる。
そして何故か何でもうまくいきそうな気がするのだ。
だから勝手に思い描いていた「楽しい楽しい高校生活」が1日目にして脆くも崩れさってしまったことで、私は今大いに絶望していた。
アニメ研究部の部室であるはずの部屋の表に貼られた掲示の前で、立ち尽くす。
「嘘でしょ………」
私が希望していたアニメ研究部は、部員数減少のため今は活動をしていないらしい。
今の今まで知らなかった。
中学の時は3年間運動部に所属していたものの、何となく体育会系女子のノリや上下関係の面倒さについていけなかったこともあり、高校では運動部には入らないと決めていた。
ずっと漫画やアニメが好きだったけれど、周りにそういう趣味の友達がいなかったこともあり、高校でアニメ研究部に入ればきっと好きなものを共有できる友人を作れると思いこんでいた。
そういう出会いの場をひとつ、失ってしまった。