第2章 補習
すぐに宇髄先生は戻って来た。
なんだか気まずいし、そろそろ帰りたくなってきた。
それにテストも近付いているから、勉強したい。
『あの…先生、私もう帰ります』
そういうと宇髄先生は「そうか、お疲れさん」と言って蛍光灯の電気を半分消した。
「気をつけて帰れよ」
宇髄先生の言葉にはい、と返事して私は小走りで、美術室から出た。
美術室から出てさっきのことを考える。
考えるけど、何も答えは見つからない。
別に変な事じゃなく、意味なんてないのかもしれない。
『はあ……』
でも、なんであの時冨岡先生が頭に浮かんだんだろう。
そう思いながら廊下を歩いていると、冨岡先生にキスをされた場所を通った。
水道の蛇口が締まりきっていなくて、水が少し流れ出ている。
─あの時と同じみたい……
忘れようとしていたのに、思い出してしまう。
まだ気まずいというか、普通に接する事が出来ない。
あまり体育の授業がないのが唯一の救い。
大人だからか分からないけど、冨岡先生は平然としている。
私はこんなに悩んでいるのに。
こんな気持ちにさせているのに。
冨岡先生はずるい。
でも、ずっと気にする事じゃない。自分も普通にしよう。
そう思いながら私は締まりきっていない蛇口を捻った。