第3章 総北逆チョコ戦争〜序章〜(今泉・鳴子・巻島)
逆チョコ。巻島はつい最近もそのワードを聞いたと思いあたる。
誰から聞いたのだったか、それは考えなくても分かる。東堂だ。
東堂は今年箱学の連中何人かと逆チョコで勝負するらしい。
絶対に負けんと電話越しに息巻いていたのを思い出す。
「なんだ?逆チョコって流行ってんのか?最近…。随分積極的な男が増えたもんだな。少し前は草食男子とか言ってたのによ。」
「もしかして逆チョコって、男からチョコを渡すことなんですか?」
「ああ、そうらしいぜ。誰かやるのか?」
「はあ………実は鳴子が……その、に…。」
「はあ?!!!?」
巻島のリアクションが意外に大きかったことに今泉は驚いていた。
巻島の様子を見て、
(まさかこの人ものことを好きなわけじゃないだろうな…)
と若干身を固くする。
「あー…なんか納得いったっショ。やっぱ局地的に流行ってるだけだわ、逆チョコ。鳴子は大事なことは男からっていうタイプだろうしな。」
「………そうですね。」
恋愛におけるスタンスを鳴子に真っ向から否定されたばかりの今泉には、「大事なことは男から」の言葉がやけに刺さる。
適当な相槌を打つことしかできなかった。
「まあ、やりたいやつだけやればいいっショ。元々そういうイベントだろ?バレンタインなんて。じゃあな。」
「あ…はい、お疲れ様でした。」
巻島が出て行き、再び部室には今泉一人になった。
の笑顔を思い浮かべ、複雑な気持ちを抱えながら彼もまた部室を後にするのだった。