第9章 変わろう
埼玉県 森然高校 ──
梟谷学園グループの夏合宿は涼しいからという理由から、いつも森然高校で行われるそうだ。
「花菜ちゃんは先に体育館に行ってコートの準備を手伝ってきてくれる?荷物とかは私と仁花ちゃんで後から運んでいくから」
「はい!分かりました」
清水の指示に従って花菜は一足先に体育館へ向かう。
中に入ると、既に他校のマネージャーや選手たちがコートの準備を始めていた。
「あ!来たきた〜 花菜ちゃんこっちこっち!」
「かおりさん、雪絵さん!」
出迎えてくれたのは梟谷のマネージャーである二人だった。
彼女たちとは前回の東京遠征のときに知り合い、すっかり打ち解けて同じマネージャー同士 助け合える仲になっていた。
「ネットは全部張り終わったみたいだからあとは審判台と得点板とー… 床のモップがけも!花菜ちゃんにはモップがけをお願いしてもいいかな」
「もちろんです」
モップを取りに体育倉庫へ足を運んだところで花菜は思いがけぬ人物に遭遇した。
「京治くん」
「!」
早速の再開に京治も幾ばくか驚いた様子で、じっと花菜の顔を見つめている。
互いに一瞬身動きを止め、数秒後ようやく止まった時が動き出したかのようにふたりは揃って緊張を解いた。
「久しぶり花菜。といっても2週間ぶりか」
「うん! びっくりしちゃった。着いて早々京治くんと話せちゃうなんて」
「俺もだ。でも良かった。試合が始まる前に、一度花菜の声を聞いておきたいと思ってたんだ」
優しく微笑みながら京治は言う。
彼の笑顔につられて花菜もまた嬉しそうな笑みを浮かべた。