第8章 緩み絡まり
夏休みに突入し、東京合宿を目前に控えた烏野男子バレー部。
そんな大事な時に烏野部員のひとり… 正確にはマネージャーのひとりが、大変な危機に陥っていた。
《とにかく!お前ははやく帰って休め。いいな、必ず3日後には完治させることだ。お前がいなきゃあいつらもマックスを出しきれねぇ》
そんなことを言われ、花菜が烏養に釘を刺されたのはほんの数時間前のこと。
朝から確かに倦怠感は感じていたが、一時的なものだと思っていたばかりに、それほど気にしてはいなかった。しかし実際に熱を測ってみると、なんと38度を越えていたのだ。
こんなときに風邪引くなんてまた皆に迷惑をかけてしまった。東京合宿も、もう三日後に迫っているというのに。
シャワーを浴び、楽なパジャマに着替えて花菜はボスッと枕に顔を埋める。朦朧とする視界の中で、さっきからひっきりなしに光り続けているスマホに目を落とした。
「あ……」
届いていたメールの差出人の名はすべて及川徹。
この間といい今日といい、二連続でお誘い断ってしまったのだから無理もない。
何やら "大事な話" があったようで、本来ならば花菜はまさに今日 及川に会う予定だった。
以前、烏野が東京遠征を終えて宮城へ戻ってきた翌日にも花菜は及川に会えないかと連絡を受けていた。しかしながらその日も柚との先約があった為に、花菜は及川の誘いを断ってしまったのだ。
あの日、柚には京治との再会について深く聞かれてとにかく大変だった。
思い返して花菜はほんのり苦笑いを滲ませる。